「株券未発行」放置のリスクとは?非公開会社が「株券不発行会社」へ変更すべき理由
最終更新日:2026年10月23日(会社法の条文は2026年10月時点で確認)
2006年5月より前に設立された会社は、定款を変えていなければ「株券発行会社」のままになっていることがあります。非公開会社であれば、株主から請求されるまで株券を発行しなくても直ちに違法ではありません。ただし、株券発行会社の株式を売買・贈与するときは株券の交付が必要なため、株券がないまま行った譲渡は効力が生じていないおそれがあります。事業承継やM&Aで株式を動かす前に、「株券不発行会社」へ変更しておくのが一般的な対応です。
自社が「株券発行会社」かどうかを確認する方法
法務局で取得できる登記事項証明書(履歴事項全部証明書)に「株券を発行する旨の定め」と記載があれば、株券発行会社です。
2006年5月1日の会社法施行より前に設立され、当時の定款に「株券を発行しない」旨の定めがなかった会社は、施行時に株券を発行する旨の定めがあるものとみなされ、株券発行会社である旨の登記もされたものとみなされています。その後に定款を変えていなければ、今も株券発行会社です。
何が問題になるのか(売買・贈与と相続は分けて考える)
売買・贈与(親から後継者への生前贈与を含む)
株券発行会社の株式の譲渡は、株券を交付しなければ効力が生じません。株券を発行しないまま株式を売買・贈与していた場合、その譲渡が有効かどうかが問題になります。後継者への株式の集約や、M&Aでの株式譲渡の際に、買い手や金融機関から指摘されることがあります。
相続
相続は売買・贈与とは違い、株券の交付がなくても株式は相続人に引き継がれます。ただし、過去の売買・贈与が有効でなかった場合は、「その株式は誰のものか(先代の相続財産に入るのか)」があいまいになり、遺産分割や承継計画に影響します。
譲渡制限株式の承認も別に必要
多くの非公開会社は、株式の譲渡に会社の承認が必要と定款で定めています。株券の交付とは別に、承認の手続きと株主名簿の書換えが行われているかも確認が必要です。
「株券不発行会社」へ変更する手続きの流れ
- 株主総会の特別決議で、株券を発行する旨の定款の定めを廃止する
- 定款変更の効力発生日の2週間前までに、株主・登録株式質権者へ通知するか、公告するか、どちらか一方を行う(株券を1枚も発行していない場合。会社法218条3項・4項)
※株券を発行している場合は、公告と個別の通知の両方が必要で、旧株券は効力発生日に無効になる - 効力発生日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局で変更の登記を申請する(登録免許税がかかる)
登記の書類作成や申請は司法書士の業務です。手続きは司法書士にご相談ください。
株券を発行し続ける場合
株券発行会社のままにする場合は、株券を作成して交付することになり、印紙税(株券1通ごとに券面金額に応じて200円〜2万円)や保管・紛失のリスクを負います。不発行への変更が難しい事情があるときの選択肢として、専門家と検討してください。
変更前の注意点:過去の譲渡は自動では有効にならない
不発行会社へ変更しても、変更前に株券を交付せずに行った売買・贈与が、さかのぼって有効になるわけではありません。過去に株式の移動がある会社は、変更手続きの前に、株主名簿と過去の譲渡の経緯を整理し、司法書士・弁護士に扱いを確認してください。
事業承継の前に確認しておきたい3つのこと
- 登記事項証明書で、株券発行会社かどうか
- 株主名簿が最新か(名義だけの株主=名義株がないか)
- 過去の株式の売買・贈与で、株券の交付と譲渡承認の手続きが行われているか
株式が第三者に分散して手続きが複雑化する前に、司法書士等の専門家に相談して「株券不発行会社」への変更手続きを進めることが有効です。
よくある質問
Q1. 自社が株券発行会社かどうかは、どこで確認できますか?
法務局で登記事項証明書(履歴事項全部証明書)を取得し、「株券を発行する旨の定め」の記載があるかを見てください。オンラインの登記情報提供サービスでも確認できます。
Q2. 株券を一度も発行していない場合、手続きは簡単になりますか?
株式の全部について株券を発行していない場合は、効力発生日の2週間前までに、株主・登録株式質権者へ通知するか、公告するか、どちらか一方を行えば足ります(会社法218条3項・4項)。株券を発行している会社のように、公告と個別の通知の両方を行う必要はありません。株主総会の特別決議と変更の登記は、どちらの場合も必要です。
Q3. 親から子へ株式を贈与する前に、株券について気を付けることは?
株券発行会社のままなら、贈与にも株券の交付が必要です。先に株券不発行会社へ変更してから贈与するか、株券を発行して交付するかを、贈与の前に決めておきましょう。贈与税や事業承継税制の扱いは個別の判断になるため、税理士にご相談ください。
この記事を書いた人
税理士・中小企業診断士 木浦洋温(きうら ひろみつ)
関東信越税理士会所属。合同会社K support代表社員、木浦洋温税理士事務所(埼玉県戸田市)代表。自身の家業の事業承継の経験を原点に、オーナー経営者の事業承継を、税理士・弁護士・司法書士・金融機関など専門家との調整役として支援しています。
最終更新日:2026年10月23日(会社法の条文は2026年10月時点で確認)
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登記の手続きは司法書士にご相談ください。
※本記事は一般的な解説です。実際の対応は、会社の定款や株主構成によって異なります。
出典
- 会社法(e-Gov法令検索)第128条(株券発行会社の株式の譲渡)、第134条、第214条〜第218条(株券)、第309条第2項第11号、第466条、第911条第3項第10号、第915条第1項 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000086
- 会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(e-Gov法令検索)第76条第4項、第136条 https://laws.e-gov.go.jp/law/417AC0000000087
- 国税庁 タックスアンサー No.7140「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm
- 法務局「不動産登記及び商業・法人登記の申請書様式一覧」 https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page_000001_00085.html
